石川直生インタビュー

僕が取材を担当させてもらった、1・4『Krush.5』に向けての石川直生の公式インタビューがリリースされたので、アップします。いや〜熱いですよ石川。野望を持ってる選手は面白い。というわけで、どうぞ!


――いよいよ1月4日の後楽園大会が近付いてきました。今回の相手は初来日のジョン・デニス。基本的なプロフィール以外はデータのない、未知の相手ですね。
「データのない相手とやるのって、今回が初めてなんですよね。でも、そこは気にしないで闘おう、と。そう思ってたら、最近になってYouTubeに映像があるのを教えてもらったんですよ。3試合あったんですけど、全部タイ人との試合で、KOで勝ってました。どのくらいのレベルのタイ人か分からないけど、デニスが弱い選手じゃないのは間違いないですね。リズムを取りながらフック系のパンチで入ってきて、インファイトで仕留めるスタイルでした。それでいて蹴りもできないわけじゃない。よく言えば(アルトゥール・)キシェンコみたいなタイプですね。狂拳(竹内裕二)みたいな感じもある。契約体重も61kgがギリギリらしいんで、本来は67〜68kgあるでしょうし」
――となると、かなり厄介な相手になりそうですね。しかも、その厄介さをファンが共有しているとは限らないという難しさもあります。
「僕もファンとしてプロレスも格闘技も見てきてるんで、お客さんがどんな感覚かは分かりますよ。“石川が、よく分からない相手とやる”っていう。こういう試合で見せるべきなのは、ホームの選手が圧倒的な力で勝つ姿でしょうね。相手が実は厄介だとか、そういうのはこっち側の都合でしかないですから。今回のお客さんは、相手がどうこうじゃなく“石川直生の試合が見たい”と思って来てくれる。そういう人に、判定は見せられないですよね。KO勝ちですよ、やっぱり」
――自分一人の力で試合を作り上げる、という。
「小林(聡)さんも、そういう試合をしてきましたからね。テーマがないような試合でも“やっぱり小林は凄い。頼もしい”と思わせてきたじゃないですか。そういう試合を、僕もすればいいんですよね。しかも今回の試合はテーマがあるわけですし」
――デニスはK-1谷川貞治イベントプロデューサーが送りこんでくる“刺客”です。ここで勝てば、K-1出場も見えてきますね。
「会見でも言ったんですけど、今年の僕のテーマはK-1で60kgと70kgの立場を逆転させること。その目標のためにも、スタート地点になる今回の試合で負けられないですよね」
――闘いたい相手など、K-1での具体的なプランも思い描いてるんですか?
「いや、それはまだ言えないですね。今回の試合に勝たなければ発言権は得られないし、勝つことで見えてくるもの、頭に浮かんでくるプランもあると思いますから」
――当然ですが、まずは今回のデニス戦に勝たなければ何も始まらない、と。
「それが大前提ですよね。KOで勝つのがスタートですから。ただ、一つ言えるのは、K-1では60kgという価値観を一から作り直すってことですね」
――今のK-1ライト級の流れに乗る、ということではない?
「そうではないですね。僕が最初に『大晦日の舞台に立ちたい』って言った時、闘いたかったのは山本“KID”徳郁選手だったんですよ。でも途中からそういう流れじゃなくなってきた。その後は渡辺一久選手との試合を考えてたんですけど、それは“やりたい”っていうんじゃなく“その相手しかいない”っていう感じだったんですよね」
――現状、K-1ライト級で目立っている選手が渡辺選手だけだ、という。
「そうなんですよ。でも、渡辺一久という存在がいても、K-1の60kgはまだ本格的に始まってない状態じゃないですか。だったら別の人間が新しい軸、主役になって、一からジャンルを作っていく必要があると思いますね。渡辺一久みたいなキャラが立ってる選手がいてもK-1の60kgが本格化してないということは、やっぱり正統派というか、強い選手、結果を出せる選手が軸にならなきゃいけないってことだと思います。それプラス、セルフプロデュースができなきゃいけない。のほほんと“仕事”をしてるだけじゃ、物事は動きませんからね」
――試合で魅せて、かつ言葉でも新しい価値観を伝えていくという。
「今、それが一番うまくできるのは、僕だろうと思ってますから。僕は“出る杭”でいいんですよ。その僕を叩こうとすることで、60kgが活性化していけばいい。僕という軸があることで、僕の“宿敵”とか“ライバル”として他の四天王(山本真弘山本元気前田尚紀)とか狂拳もクローズアップされてくると思うんですよね。これだけの人材がいるんだから、絶対に盛り上がりますよ」
――となると今回のデニス戦は、どこまで“出る杭”になれるか、存在感が試される試合にもなりますね。
「その通りですね。それにはまず、倒して勝つことですよね」
――11月の“狂拳”竹内戦を見る限り、K-1ルールでの闘い方もかなり確立されてきた感じがありますね。
「ボクシングの練習をしたことが活きてますね。ボクシングといってもパンチの打ち合いじゃなくて、接近戦でのテクニック。首相撲にいくんじゃなく、横に回りこんだりすることが自然にできるようになった。まだ完成形ではないですけど、少なくともルールに縛られてる感じはないです。だから、今の俺はキックルールでも前より強くなってると思うんですよ」
――闘いの幅が広がったというか。
「そうです。掴んでも闘えるし、掴まなくてもいける。前よりも面白いキックボクシングの試合を見せられると思いますね。だからこそ、K-1で目立って、その上で『俺のキックボクシングの試合を見てくれ!』って言いたいんですよ」
――あくまでも“本分”はキックボクシングだと。
「そこはまったくブレてないです。K-1に出ても、俺は“K-1ファイター”になりたいわけじゃない。あくまで俺は“全日本キックのキックボクサー”なんです。全日本キックという団体はもうないですけど、僕にはその意識がある。ホームリングは後楽園ホールだし、(Krushを主催する)グッドルーザーの大会。後楽園で、グッドルーザーの興行でキックボクシングの試合を見せたいんです」
――前例はないですけど、だからこそ……。
「やりがいがありますね。ただ、今は先のことばかり考えてられないですからね。まずは今回の試合でお客さんを満足させます。そこからがスタートなんですよね、本当に。それに、実は俺、1月4日の試合って負けたことがないんですよ。引き分けが一回あるだけで。毎年、1月4日の大会が終わって新年を迎える感覚なんで、2010年も景気のいい始まり方にしたいですね」