メルマガ再録「卜部弘嵩、初の海外遠征で期待される“探求”と“図太さ”」(14.02.28)

格闘秘宝館メルマガ再録、もういっちょいきます。4.26、フランス遠征で世界戦に臨むKrushトップファイター・卜部弘嵩についての原稿です。



卜部弘嵩、初の海外遠征で期待される“探求”と“図太さ”」


 2月26日の記者会見で、初代Krush -60kg王者・卜部弘嵩の海外遠征が発表された。舞台は4月26日、フランス・ヴァンヌで行なわれるISKA世界スーパーライト級王座決定戦。対戦相手は過去に日本で闘い、延長戦までもつれ込んでいる(卜部の負傷TKO勝ち)グザヴィエ・バスターだ。
 バスターにとっては不本意な負け。今回はホームでのリベンジマッチということになる。卜部の側からすると、完全アウェーの舞台に乗り込む形だ。
 このリマッチはバスターの希望で実現したもの。しかし卜部も、以前から海外遠征を希望していたという。活躍の場を広げたい、自分をアピールしたいということもあるだろうが、アウェーのリングを経験することで今までにない経験をしたい、自分を成長させたいという思いもあるはずだ。
 昨年12月に行なわれた梶原龍児引退試合、その相手に名乗りをあげた卜部。今回の海外遠征も、そこにつながってくる試合ではないか。どうやったらもっと強くなれるのか、何をどう変えればいいのか、自分に足りないものは何なのか。彼はそれを考えているはずだ。
 そういう卜部の自己探求とは別の部分での興味深さもある。僕が会見場で思い出したのは、佐藤嘉洋のことだ。
 K-1 MAXに出場する前、全日本キックに所属していた頃の佐藤は、頻繁に海外遠征を行なっていた。タイ、オランダ、イタリア。僕はイタリアでの試合を現地観戦したことがあるのだが、とにかく驚いた。正直に言うと、「あれ、佐藤ってこんなに凄かったの!?」という感じ。
 確かに、日本で見る佐藤も強かったのである。しかし徹底して勝負にこだわるファイトスタイルは地味にも感じられた。時代はK-1全盛期。日本のキック界、つまり佐藤の近いところにも、小林聡武田幸三といったリスキーなファイトで観客の心を揺さぶる選手たちがいた。
 そういう中で、“海外で結果を出せる、日本より海外で評価される選手”として、佐藤は自分の価値を高めていったのだ。
 僕が見たイタリアでの試合、佐藤は現地在住のタイ人ファイターをヒジとローでボコボコにし、TKO勝ちを収めた。アウェーだからやりにくそうなんてところがまったくない、むしろ日本よりのびのびしてるんじゃないかと思えるくらいの闘いぶり。
 見ている僕の気持ち、その前提も違う。やっぱり海外で闘う日本人選手に関しては内容は二の次というか「とにかく勝ってくれ」と思うもの。そして「とにかく勝つ」という点において、佐藤ほど頼もしい選手はいないんじゃないかと感じたのである。
 長々と佐藤のことを書いたが、卜部にも似たようなところがあるような気がするのだ。日本だろうがフランスだろうが、きっちり実力を出してくれるような気がする。自分を貫き通す図太さがあるというか。
 この遠征の結果がどうなるかはまだ分からないが、“敵地で頼りになる男”という存在感は卜部にふさわしいんじゃないか。そしてその上で、今までにないプラスアルファを身につけたら、さらに面白いことになる。何年か経って、卜部自身が梶原戦と並んで「あれが転機でしたね」と振り返るような試合。今回のフランス遠征が、そういうものになるといい。

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